発狂した宇宙
フレドリック・ブラウン Fredric Brown, 稲葉 明雄
第一次月ロケット計画は失敗に終わった! 不運にも墜落地点にいたSF雑誌〈サブライジング・ストーリーズ〉の編集者キース・ウィンストンの遺体は、粉微塵に吹き飛ばされたのか、ついに発見されなかった。 ところが、彼は生きていた ―― ただし、なんとも奇妙な世界に。 そこでは通貨にクレジット紙幣が使われ、身の丈7フィートもある月人が街路を闊歩し、そのうえ地球は、アルクトゥールス星と熾烈な宇宙戦争を繰り広げていたのだ!
多元宇宙ものの古典的名作であると同時に、“SF”の徹底したパロディとして、SFならでは味わえぬ痛快さと、奇想天外さに満ちた最高傑作!
★★★
初版が1949年ということで大分古い物語なのだけれど、再度、フレドリック・ブラウン Fredric William Brown がパラレルワールド(平行宇宙・多元宇宙)を描いた傑作SFを取りあげてみる。 以前『宇宙をぼくの手の上に』という本を紹介したが、あちらは短編集、こちらは長編だ。
この本は何度読み返しても、「次はどんなことになるんだろう?」とワクワクさせられるし、御都合主義的な話の展開やハッピーエンドに終わる結末をも含めて、良いバーボンにように飽きることがない。 ともかく「正気と狂気」「現実と夢」の世界を語らせたら右に出る者がいないほど饒舌なブラウンの語り口にとことん酔ってしまおう。 それにしても、宇宙旅行が瞬間移動するミシンから実現されるとはなぁ~